紗楽ちゃんのネコネコ平家物語 ー プロローグ ー

紗楽ちゃんのネコネコ平家物語

はじめに


 親戚の紗楽ちゃん(中1)が私のブログにマンガを付けてくれると聞いて、『平家物語』のあらすじを書こうと思い立ちました。
 本当は私の麻生氏研究に付けてもらおうと思っていたのですが、いつ研究ができあがるか分からないので、とりあえず、源平合戦の序章(平治の乱から始まります)を書くことにしました。

 紗楽ちゃんは約束を守ってすぐにマンガを描いてスマホにデータを送ってくれました。けれど、筆者はブログを出してるくせにスマホがチョー苦手!

 スマホに送られてきた絵を、どうやってブログに貼り付けるのかがわからず、すったもんだしているうちに、1年以上の年月が流れてしまいました。

 それが今日になって、やっとやり方がわかったのでブログにできました(記念日です)。

 紗楽ちゃん、遅くなってごめんね!

※ 読者の皆様へのお願いです。このブログ全体は原則としてコピペでも何でもありなんですけど、紗楽ちゃんの権利は守りたいので、猫のキャラクターだけは転載不可でお願いします

序章の前に


 むかしむかし(といっても西暦1185年2月1日とはっきりしているんだけど)、あるところ(これも福岡県遠賀郡芦屋町とはっきりしています)に、一品房昌寛(いっぽんぼうしょうかん、名前が長いので、この後はショーカンとします)という鎧(よろい)を着た、戦うお坊さんが合戦に来ていました。


 源頼朝(みなもとのよりとも、ヨリくんとします)という、鎌倉幕府を作った人と古くからのマブダチで、今は、頼朝の部下で、取締役(とりしまりやく)みたいな仕事をしています。
 ショーカンは、去年、平家を滅ぼすために、源範頼(頼朝の弟、ノリちゃん)の主力軍の副官として、記録を取ったり人事評価をしたり作戦を立てたりする重要な役目を任されました。

ノリちゃんとショーカンに任された軍は、鎌倉幕府最強の軍団で、出発の日には頼朝(ヨリくん)と奥さんの政子(マサコ)がスタンドを作って、その上から2人で手を振って見送ったほど期待された軍団でした。京都・大阪・岡山・広島・山口を通って九州に渡り、平家を西から包囲する役割を任されていました。

ノリちゃんとショーカンに任された軍は、鎌倉幕府最強のオールスター軍団で、出発の日には頼朝(ヨリくん)と奥さんの政子(マサコ)がわざわざ道ばたにスタンドを作って、その上から2人で手を振って見送ったほど期待された軍団でした。

 京都・大阪・岡山・広島・山口を通って九州に渡り、平家を西から包囲する役割を任されていました。

 

 
 東から包囲するのは、頼朝(みなもとのよりとも)の弟の義経(よしつね、ヨッシー)の軍団です。
 頼朝(ヨリくん)は、弟たち(ノリちゃんとヨッシー)に香川県の屋島(高松市)にいる平家を東西からじわじわと包囲させ、じっくり交渉して平家に連れていかれた安徳天皇と三種の神器(天皇である証拠を示すアイテム)を無事に取り戻そうと考えていました。

 けれど、義経(ヨッシー)は気が短いので、じわじわするのが我慢できず、どんどん平家を攻めていったのです(中2の国語で習います)。

 
 範頼(ノリちゃん)の九州占領が間に合いません。作戦失敗?
 一品房昌寛(ショーカン)はどんな作戦を立てて、範頼(ノリちゃん)と義経(ヨッシー)を協力させるのでしょうか?

主な登場人物


一品房昌寛(ショーカン)…京都育ち。頼朝の親友。作文や交渉ごとが得意。

源頼朝(ヨリくん)…京都育ち。源氏のプリンス。お坊ちゃま。

源範頼…(ノリちゃん)…頼朝(ヨリくん)の弟。真面目な人。無理はしない。

源義経(ヨッシー)…(ヨリくん)の末の弟。戦いの天才。でも、チョーわがまま。

北条政子(マサコ)…頼朝(ヨリくん)の奥さん。気が強い。頼朝大好き。

【ヨリくん・ノリちゃん・ヨッシーの関係】

 3人は兄弟です。でも、お父さんは同じですが、お母さんはみんな違います。20年間、別々に育ち、それぞれの人生を送って大人になりました。3人が顔を合わせるのは、大人になってからのことです。

【源氏略系図】

※「一品房昌寛(ショーカン)」は頼朝(ヨリくん)の友達なので、載ってません

【ヨリくん(頼朝)の生い立ち】

源頼朝(よりとも:ヨリくん)は、「源氏」という日本第2位の武士団の親分、源義朝(みなもとのよしとも)の3番目の男の子です。お母さんが違うお兄ちゃんが2人いたのですが、頼朝(ヨリくん)のお母さんがいちばんお金持ちだったので、生まれた時から源氏を継ぐようになっていました(ちなみに1番上のお兄ちゃんは「義平:よしひら」、2番目は「朝長:ともなが」と言います。どちらのお母さんも歌って踊れる芸能人でした)。
 要するにヨリくんはお坊ちゃまです。身長は平均よりも少し低いけれど、頭はいかにも賢そうで大きめで、色が白く、勉強もよくできました。スポーツも万能で、特に弓矢は百発百中でした。


 

頼朝(ヨリくん)が13歳の時、お父さんの源義朝が京都でクーデターを起こしました。
 日本最大の武士団である平家(親分は平清盛)が、熊野に社員旅行に行っている間に、上皇様と天皇様を拉致(らち)することができ、クーデターは成功しました。上皇・天皇がいるのですからどんな命令も出し放題です。心配していた平家の清盛からも「私は家来になります」という手紙が送られてきました。
「ふっふっふ、これで天下はオレのものだ」、お父さん(源義朝)は大喜びです。
 けれど、平清盛の降参の手紙は、実はワナだったのです。
 源義朝を油断させ、無事に京都の自分の屋敷に戻ることができた平清盛は、こっそり部下の兵隊を呼び集めました。
 と同時に、どこかに監禁されている上皇様・天皇様を捜させました。

 

平治の乱、開戦!

この時、上皇・天皇様は皇居の隣の「一本(品)御書所」に監禁されていらっしゃいました。そこは貴重な本を書き写して保管する、今でいう国会図書館のようなところです。もしかするとその職員の中に一品房昌寛(ショーカン)がいたのではないでしょうか。そして、後白河上皇の警護隊を源頼朝(ヨリくん)が担当する可能性は十分にあります。3人の出会いは「平治の乱」の時から始まっていたのかもしれません。

「上皇・天皇、発見!」
すぐに平清盛は裏から手を回して、上皇様を仁和寺に移し参らせ、警戒が厳しい天皇(17歳)様には女装をさせて脱出させ、自分の屋敷に迎えました。
「だましたな!」、お父さん(源義朝)は激怒します。
「清盛を殺す」

けれど、源氏の兵たちはやる気がありません。逃げ出す者もいます。
なぜなら、脱出した天皇が「源義朝を討て!ただし、降参してきた者は許す」と呼びかけていたからです。
そうこうしているうちに、兵が源氏の3倍にもなった平清盛の軍勢が攻め寄せてきました。

明け方の光の中で、大門がこじ開けられ、平家軍が乱入します。一番上の義平(よしひら)にいちゃんが数人の部下と迎え撃ちました。


 義平にいちゃんは20歳だけど、ムチャクチャ強くて、「悪源太(あくげんた)」とあだ名されています(「悪」には当時、「強い」という意味がありました)。

 その名の通り、侵入してきた平家軍をほとんどひとりで防いでいます。

 中には義平にいちゃんの横をすり抜けて、お父さん(源義朝)の方に向かってくるヤツもいますが、右から来れば源朝長(ともなが)兄ちゃんが、左から来れば僕(源頼朝:ヨリくん)が百発百中の弓矢で倒します。
 屋敷の大庭は、平家の怪我人だらけになりました。
「退け-」とうとう、平清盛が撤退命令を出しました。
平家の侍達は、「これはかなわぬ」と一目散に逃げ出します。 

「よし、追撃せよ!」とお父さん(源義朝)が大きな声で命令しました。
「おーっ」源氏の侍達は勇気を取り戻しました。
お父さんと僕(源頼朝:ヨリくん)たち3人兄弟を先頭に、源氏軍は逃げる平家軍を追いかけます。
小雪がちらついていましたが、冷たい風さえ心地良く感じられました。
「戦いって、思ったよりも楽だな」そんな考えがちらっとよぎった時、
「ギー、…ドン」屋敷の大門が閉じました。
「何があったの?」源氏軍の足が自然に止まりました。
門の上からは源氏の兵をめがけて矢が飛んできます。
後から聞いた話では、これも平清盛のワナで、わざと兵を退いて源氏軍を外におびき寄せ、屋敷が空っぽになったところで、裏切り者が裏門を開けて平家の別働隊を呼び込んだのです。
もう帰るところはありません。
さっきまで横を走っていた源氏の兵達はいつのまにか逃げ散っていました。残った者は10名もいなかったでしょう。
「東へ!鴨の川原に源頼政殿(よりまさ:源氏一族の長老)がいるはずだ。合流するぞ」
だんだん強くなる風を顔に受けながら、鴨川を渡りました。雪の向こうにかすかに白旗が見えます。
「頼政殿!義朝でござる。平清盛を討ちとうござる。兵をお貸しくだされ!」
お父さん(源義朝)は何度も大声で叫びましたが、白旗がはためく音が聞こえるだけです。「裏切ったか…」、お父さんが馬首をめぐらしかけた時、
「義朝よ、もはや手遅れじゃ。清盛の首は取れぬ。すぐに逃げよ。一族の誼(よしみ)じゃ、命は取らぬ。関東に戻って力を蓄えるのじゃ」
かすかな声が風の隙間から流れてきました。
お父さんは何か言いかけたように見えたのですが、「…かたじけない(ありがとう)」しか聞こえませんでした。
 僕たちは大原の竜華越えで京都を脱出しました。そのとき、落人狩りの山法師(比叡山の僧兵)に襲われ、朝長兄ちゃんの左の太ももに矢が突き刺さってしまいました。それでもなんとかお父さん(源義朝)たちは琵琶湖のほとりにたどり着くことができたそうです。

ヨリくん、捕虜になる

でも僕(頼朝:ヨリくん)は一緒に逃げることはできませんでした。馬の上で居眠りしているうちにみんなとはぐれて迷子になってしまったからです。

 迷子になってしまった僕は平家にとらわれ、縄でぐるぐる巻きにされ、京都六波羅の平清盛の屋敷に連れて行かれました。到着すると縄は解かれ、新しい衣服を与えられました。部屋は一間半(2.7m)四方で窓がなく、さすがに囚人(捕まった人)であることを思い知らされました。

 食事は豪華とはいかないものの、日ごろ食べていたものと同じレベルで、源氏の嫡男(ちゃくなん・跡継ぎ)である僕への気遣いが感じられました。僕は覚悟しました。
「敗将(負けた方の大将)の子は、男であれば必ず殺される」
僕は仏具を貸してくれるようお願いしました。見張りの侍は一瞬驚いたようでしたが、快く引き受けてくれ、翌日には看経(かんきん:お経を唱えること)できるようになりました。

とらわれて何日かの間は、父や兄、家来たち、僕の前で倒れた敵の必死の形相が浮かんでは消え、一晩の間に何度も目を覚ましました。もしかしたら叫び声をあげていたかもしれません。けれど、経を読む間はその人達の表情が和らぐように思えたのです。
「救われるって、こういうこと?」
僕は起きている間はずっと経をあげるようになりました。

 

突然ですが、私は「池禅尼(いけのぜんに)」と申します。

清盛の母ではございますが、あの子の実の母親は早くに亡くなりまして、私は後妻ですので血のつながりはございません。けれど、あの子(清盛)は優しい子で、私を実の母親のように大事にしてくれます。今日は、私の実の末の子「家盛(いえもり)」の七回忌の法要の相談に参りました…。

 というのは表向きで、実は「鬼の子(源頼朝:ヨリくん)がお経を唱えている」と聞いたものですから、怖いもの見たさで参ったのでございます。
 「鬼」とは先にお亡くなりになった源義朝殿のこと。「その子が経を唱えるなどありえることではない」ともっぱらの噂。でも世の中って、百聞は一見にしかずと申しますでしょう?


 
 それで、清盛を待つ間に艮(うしとら:北東)の小部屋をのぞいてみましたの。昼というのに薄暗い部屋にその子は確かにおりましたわ。後ろ姿もすっとして気品があって、さすがは源氏の嫡男(跡継ぎ)という感じでしたわねえ。声も豊かでいい響き。いつもの法華経が何倍もありがたく感じましたわ。

 「鬼の子と聞いたけど、思えばかわいそうな子よねえ。お父上の義朝殿は、尾張までは逃れたんだけど、そこで部下に裏切られて、お酒を飲まされ風呂に入れられて、裸のまま30人の侍たちにめった切りにされたんですって。
 2番目の兄の朝長さんは、足の矢キズが重くなって「お父さん、私はもう馬に乗れません。これではみなさんの足を引っ張ってしまいます。どうか、私を殺してください」とお父さん(源義朝)に頼んで、西を向いて念仏を唱えながら実の父親に殺されたそうよ。
 一番上の…義平さんっていったかしら、とっても強かったらしいんだけど、ついこの前、清盛の隊列を襲おうとして捕まって殺されちゃったわね。
 あのとき、義平さんの変装に気づいて大声を上げたのは、赤ちゃんの時から義平さんを育てた乳母夫(めのと)だったそうよ。
 それを思えば、この子(頼朝:ヨリくん)は運が強いわ。一緒にいたら絶対死んでたわよ。」
「あら、やだ。お経が終わってる。ちょっと、お話してくるわ」

(池禅尼、小部屋には行って頼朝(ヨリくん)としばらく何かを話し、やがて泣きながら出てくる)

「この子、家盛(幼くして死んだ我が子)と瓜二つだわ! 私、この子を絶対助ける!」

平清盛の部屋で、たぶんこうだったんだろう劇場

平清盛:義母上(ははうえ)、今日はわざわざのお越し、ありがとうございます。
   お元気そうで、なにより嬉しゅうございます。
(心の声:このいそがしいときに、なにしに来たんだ?)

池禅尼:清盛さんもお国のためによく働いておいでですね。私も鼻が高うございますよ。

平清盛:いえいえ、私のような凡才は、長い時間働かないと人についていけませんので。
(心の声:早く用件を言ってくれよ。休み時間がなくなっちまうだろう!)

池禅尼:今日は、一生のお願いがあって参りましたの。

平清盛:ほほう、慎み深い母上にしては珍しい。で、どんな?
(心の声:出た!一生のお願いって、何度目だよ。どうせまた無茶ぶりするに決まってるぜ」)

池禅尼:実は、源義朝殿のご子息の頼朝(ヨリくん)さんについて何ですけど…。「鬼の子(頼朝)」がずっとお経をあげてると聞いたもので、理由を聞きましたら…

平清盛:はあ
(心の声:いやな予感!)

池禅尼:この前の戦いで亡くなった一族や家来、敵だった平家の人々が極楽に行けるようにお経を上げてるんですって。もう泣けちゃって、泣けちゃって…

平清盛:ほう、平家の侍まで…
(心の声:なんで婆さんって、仏やらお経やらの話が好きなんだろう)

池禅尼:それだけじゃありませんのよ。頼朝さんのお顔が、家盛の顔にそっくりなの。これって、家盛の七回忌、仏様のお引き合わせよ。

平清盛:なるほど、いわれてみれば家盛と頼朝は似ているような気がしないわけではないこともない。
(心の声:全然、似てねーし。家盛は親父似のカボチャ顔だっただろ!)

池禅尼:それで、一生のお願い、頼朝さんの命を助けて!


平清盛:義母上、それは無茶です。頼朝は源氏の棟梁(親分)の嫡男(跡継ぎ)ですぞ。生かしておけば必ず立派な武将になって平家を滅ぼしに来る!    

池禅尼:だから、一生のお願いなんです。私の命と引き替えにあの子を助けておくれ!

平清盛:いくら義母上のお願いでも、できることと、できないことがございます。(心の声:やっぱ無茶ぶり!私は日本国の秩序と繁栄のために断ってみせる!)

池禅尼:あら、清盛さん。あなた、この前、「常磐(ときわ)」という女の言うことを聞いて、義朝殿の男の子(源義経ヨッシーを含む)を3人も助けたらしいわね。

平清盛:・・・!(心の声:ゲッ、ばれてる)

池禅尼:あの女の願いは聞けて、この義母の願いは聞けない!ああ悔しい。美女の願いは聞けても、この老いぼれの願いは聞けないというのね。あなたみたいな親不孝者は古今東西どこにもいないわ。もう結構です。私を殺して頼朝も殺しなさい。地獄の底からあなたを恨んでやるわ!

平清盛:わ、わかりました。
    義母上がそこまでおっしゃるのなら、「死、一等を免じて流罪に処す」ということで、遠くに追いやるのはどうでしょう。
(心の声:ことが大げさになったら、かみさんが怒るぞ。ここはうまくまとめないと)

池禅尼:流罪とか言って、「罪人は法の保護を失った身だ」なんてごましながら、殺す気でしょう…?

平清盛:いえ、決してそんな…。そうだ、伊豆がいい。
    伊豆の知行国主(国司=県知事を任命する人)は、源頼政(戦いの時に逃がしてくれた源氏の長老)ですし、今の国司(県知事)は、頼政の息子のはずです。お義母様の家来が伊豆まで連れて行けばきっと安全だ。そうだ、伊豆がいい!
(心の声:ひょえー、やばかったー。だいたい、おれはこの義母が苦手なんだ。親父の介護を任せきりで、遊んでばかりだったからな。でも、まあいいか。戦死者は、生き残った遺族に供養させないと、怨霊になって化けて出てくるというからな。まあ、ちょうどいいか)

 このようにして源頼朝(ヨリくん)の命は助けられ、伊豆国に流罪と決まりました。さてさて、これからどうなりますやら。後は続きのお楽しみ。


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